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医療保険制度(健康保険制度) 9号

協会けんぽ」つづき
8. 保険給付

③ 入院時生活療養費
 入院時生活療養費は、特定長期入院被保険者(療養病床に長期入院する65歳以上の被保険者)が療養病床(病院や診療所のベッドのうち、主として長期にわたって療養を必要とする高齢者等を対象にしたベッド)に入院した際に、療養の給付とあわせて、食事の提供である療養および温度、照明、給水に関する適切な療養環境の形成である療養(生活療養)を受けた場合に、生活療養に要する費用から生活療養標準負担額を控除した額で、現物給付として支給されるものです。
介護保険では、介護保険施設に入所する高齢者等には一定の居住費や食費の負担が義務づけられており、入院時生活療養費は、介護保険との均衡を図る観点から設けられたものです。

(厚生労働大臣の算出基準による生活療養費) −(平均的な家計の食事・居住費等と比較した標準負担額)=(入院時生活療養費)

 ただし、標準負担額は、所得の状況、病状の程度、治療の内容、その他の状況を斟酌して厚生労働大臣の定める者について軽減されており、食事費は一食につき460円〜130円、居住費は一日につき320円となっています。
なお、療養病床に入院する特定長期入院被保険者であっても、医療の必要性の高い場合は、生活療養標準負担額は必要なく、入院時食事療養費と同額の負担となります。
また、被扶養者の入院時生活療養にかかる給付は、家族療養費として給付されます。
④ 保険外併用療養費
 健康保険が適用されない保険外診療を受診すると、通常健康保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となります。
ただし、保険外診療を受診する場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選択療養」については、保険療養との併用が認められており、一般の療養の基礎となる部分(診察・検査・投薬・入院料等)にかかる費用については、一般の保険療養と同じく一部負担金を支払い、残りは健康保険から現物給付されます。これを保険外併用療養費といいます。

厚生労働大臣が定める「評価療養」:
高度先進医療、医薬品の治験に係る診療、医療機器の治験に係る診療、薬価基準収載前の承認医薬品の投与、保険適用前の承認医療機器の使用、薬価基準に収載されている医薬品の適応外使用

厚生労働大臣が定める「選択療養」:
特別の療養環境の提供、予約診療、時間外診療、200床以上の病院の未紹介患者の初診、200床以上の病院の再診、制限回数を超える医療行為、180日を超える入院、前歯部の材料差額、金属床総義歯、小児う触の治療後の継続管理

 例えば、大学病院などで高度先進医療を受け、入院したときの総医療費が200万円とします。この内、80万円が先進医療技術に係る費用、残りの120万円が一般の療養の基礎となる部分とします。この場合、80万円については全額自己負担となり、120万円に対しては保険外併用療養費として保険給付され、療養の給付と同様の一部負担額を支払うことになります。したがって、この場合の負担額は、80万円+120万円×3割(一部負担金36万円)=116万円となります。なお、一部負担金(36万円)については、高額療養費制度が適用されます。
 また、被扶養者の保険外併用療養費にかかる給付は、家族療養費として給付が行われます。