医療保険制度 3号
被用者保険には、大きく分けると協会けんぽ、組合健保、共済健保の3つの制度が存在します。この中で最も加入者の多い協会けんぽ(約3,400万人)について解説していきます。
① 適用事業所
法人の場合は、従業員が1人であっても強制適用事業所となります。この法人とは、私法人、公法人、公益法人、社団法人を問わず全ての法人が該当します。また、健康保険(厚生年金保険についても同じ)の場合、法人の事業主(代表取締役や理事長、代表社員等の役員)も法人に使用されるものとして被保険者になります。したがって、従業員のいない社長1人だけの株式会社であっても強制適用事業所となります。
個人経営の場合は、法律に定められた16業種(製造業、金融、流通業、サービス業、運送業など一般的な業種)であって、従業員が5人以上の事業所は強制適用事業所となります。5人未満の場合は、事業主が従業員の1/2以上の同意を得て、厚生労働大臣に対し任意加入の許可申請をし、許可されれば適用事業所になります。これを任意適用事業所といい、取り扱いは、5人以上の強制適用事業所と全く同じです。
また、個人事業で従業員が5人以上である強制適用事業所において、従業員数が5人未満になった場合、特別な手続きもなく、そのまま適用事業所として取り扱われます。
② 一般の被保険者
協会けんぽにおける一般の被保険者資格は、強制適用事業所又は任意適用事業所に雇用されるに至った日から取得することになります。ただし、日々雇い入れられる者(1ヶ月を超え、引き続き雇用されるに至ったときは除く)、2ヶ月以内の期間を定めて雇用される者(所定の期間を超え、引き続き雇用されるに至ったときは除く)、季節的業務に雇用される者(継続して4ヶ月を超え雇用される場合は除く)や国民健康保険組合(医師国保組合、建設国保組合等)の事業所に雇用される者等は、適用を除外されます。この内、日々雇い入れられる者や2ヶ月以内の期間を定めて雇い入れられる者、季節的業務に雇用される者等には、別途、日雇特例被保険者制度が存在し、原則として、この被保険者となります(ただし、日雇特例被保険者にも適用除外の取扱いがあります。ここでの説明は省略します)。
また、国家公務員は共済健保の加入者になりますが、国の事業所で常時従業員を使用するところは協会けんぽの強制適用事業所となり、共済健保に加入できない臨時職員等は協会けんぽの被保険者となります。
なお、個人経営の事業主は、法人に使用されるものには該当しませんから協会けんぽの被保険者にはなれません。したがって、個人経営の事業所が健康保険の適用事業所となっている場合、従業員は被保険者となりますが、事業主は被保険者になれず個人的に国民健康保険に加入することになります。
このように適用事業所に雇用される者は、適用を除外される者を除き、基本的に一般の被保険者となりますが、昨今の雇用形態で大きな比重を占めているパートタイム労働者の取扱いについて、よく問題となることがあります。パートタイム労働者の適用については、1ヶ月あたりの労働日数、及び1日当たりの労働時間が同一企業における通常の従業員に比べ、おおよそ3/4以上である場合、被保険者として扱うことになっています。
例えば通常の従業員の1日の所定労働時間が8時間、1ヶ月の平均所定労働日数が21日であれば、1日の所定労働時間が6時間以上、且つ1ヶ月の所定労働日数が16日以上であれば、被保険者資格を取得しなければなりません。しかしながら、この要件を満たしているにもかかわらず、パートタイム労働者を被保険者としていないケースが見られます。過去において社会保険事務所(現、年金事務所)の調査等で指摘を受けた企業も結構存在するのではないでしょうか。加入要件を満たしながら、被保険者資格を取得していない場合、ことによっては2年間遡って被保険者資格を取得しなければならないこともありますので、要注意です。
また、外国人労働者の取扱いですが、健康保険法では適用事業所に雇用される者については、国籍の如何を問わず被保険者になることになっていますので、外国人を雇用した場合、適用除外に該当していたり、パートタイム労働者で3/4の要件を満たしていなかったりする場合を除き、全て被保険者となります。