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代表三宅直知の著書

「えっ! 労災事故で会社がつぶれる?!」(労災保険給付と民事損害賠償)
著 者 三宅直知 小川秀樹 共著
出版社:新日本保険新聞社
定 価:¥1,400(消費税込)

平成24年11月、電子書籍として復刊しました。PDF電子書籍ダウンロードサイト「DL-MARKET」から購入していただけます。簡単な会員登録が必要です。
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第1章:雇用リスク
第2章:労働基準法と労災保険・民事損害賠償の関係
第3章:労災保険
第4章:民事損害賠償
第5章:派遣労働者等非正規労働者と労災保険・民事損害賠償の関係
第6章:労災保険の主な補償内容
第7章:民事損害賠償の計算
第8章:労災保険給付と民事損害賠償
第9章 第9章:労災保険法の改正
第10章 第10章:雇用リスク対策
第11章 第11章:民事賠償リスクに対応する民間保険


 企業(使用者)と従業員(使用人)との雇用契約において生じる様々な企業リスクを雇用リスクと呼んでいます。雇用リスクの中で、発生の頻度は低いものの、発生すれば莫大な負担を企業が強いられるものに、業務災害に対する民事損害賠償があります。最近の賠償額を見ると1億円を超えるような事例も珍しいものではなく、そうなれば、企業によっては最悪の場合、会社が存続出来ないことにもなりかねません。

例えば、「従業員が心筋梗塞により死亡し、長時間労働に起因した「過労死」であるとして労災認定された。その後、遺族である従業員の妻が、これは会社の安全配慮義務違反によるものだとして、逸失利益、慰謝料等、2億円の損害賠償を要求された。」といった事例は、昨今珍しいどころか、もはや当たり前の事になっています。

 「えっ、労災保険から遺族年金が支給されるのに、何故、その上に会社が損害賠償まで請求されなければならないの?労災保険料の保険料は、全額会社が負担しているのに・・・。」と思う方が多いのではないでしょうか。
労災保険の保険給付が決定されると(この決定を一般的に労災認定されると表現しています)、この事例の場合、遺族である妻には、他の者との婚姻等により受給権が消滅しない限り、自身が死亡するまで遺族年金が支給されます。遺族年金の受給総額は、死亡した夫の賃金額や受給資格者の人数、受給期間等によって異なってきますが、例えば35歳で受給し始めて80歳まで受給権を失うことなく生存すると、総額で1億円以上になるケースが大半です。そして、労災保険の保険料は、会社が全額負担しています。

 このような点だけを捉えると、「何故、その上に・・・。」と思っても当然のことかもしれません。しかしながら、業務災害が発生した場合、特にそれが重大災害であった場合、労災保険の補償だけで済まされる時代は、遠い昔の話になってきたようです。 本書では、雇用契約における企業と従業員の義務を明確にした上で、労災保険の概要や現状を解説し、安全配慮義務・不法行為等を根拠とした損害賠償請求、労災保険給付と民事損害賠償額の調整等、そして業務災害という最大の雇用リスクに対して企業はどのような備えが必要かを解説していきます。 尚、交通事故などの第三者行為災害に該当するものについては、第三者が被災した従業員に対し損害賠償義務を課せられることになり、特別な事情や民法第715条における使用者責任が認められない限り企業に損害賠償責任が生じることはありません。

 また、労災保険と自動車損害賠償保障法による自賠責保険との調整方法も、本書で取り扱う使用者行為災害の場合と異なっています。 したがって、本書では、交通事故などの第三者行為災害については対象外とし、あくまで使用者行為災害における労災保険給付と民事損害賠償との関係について解説します。