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医療保険制度(健康保険制度) 11号

「協会けんぽ」つづき
8. 保険給付

⑥ 訪問看護療養費
 訪問看護療養費は、居宅で療養している被保険者および被扶養者(被扶養者の場合は家族訪問看護療養費という)が、かかりつけの医師の指示に基づいて、訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合に給付されます。
訪問看護の基本利用料は、原則として医療費の3割で、療養の給付と同じく現物支給されます。ただし、交通費やおむつ代などの実費や特別サービス(営業時間外の対応等)を希望して受けた場合は別途料金が必要になります。なお、基本利用料は高額療養費の対象になります。
 看護の内容は、末期悪性腫瘍のターミナルケア、難病の看護、家族のいない時間の看護、家族が看護に疲れきっている場合の看護等、患者やその家族のニーズに合わせて行われますが、先述のようにかかりつけの医師の指示が必要ですので、訪問看護療養を希望する場合は、かかりつけの医師に相談し、そこから訪問看護ステーションなどに指示をしてもらわなければなりません。
 なお、65歳以上の者、または40歳以上65歳未満で特定疾病罹患者については、介護保険により介護認定される可能性もあります。介護認定されるような場合どちらを利用するかは、かかりつけの医師や訪問看護ステーションに相談して病状や生活状況に適した方を利用することになります。
⑦ 移送費の支給
 移送費は、病気やケガにより入院治療が必要なとき、又は転院せざるを得ないときで、患者の移動が困難な場合に、医師の指示で一時的・緊急的必要があって移送された場合に現金給付として支給されます。
 移送費を支給されるには以下の全ての要件に該当する必要があります。
1.移送の目的である療養が、医師の指示による保険診療として適切であること
2.患者が療養の原因である病気やけがにより、移動が困難なこと
3.緊急、その他やむを得ないこと

 支給額は、以下の通りです。
1.最も経済的な通常の経路および方法により移送された場合の旅費に基づいて算定した額の範囲での実費
2.医師や看護師の付き添いを必要とした場合、その人の人件費
⑧ 傷病手当金
 病気やケガで療養中の被保険者およびその家族の生活を補償する目的で設けられたのが、傷病手当金で、病気やケガのため労務不能と診断され、会社を休み、充分な給与等が受けられないときに支給されます。
 傷病手当金は、被保険者(任意継続被保険者は除く)が病気やけがで労務不能となり、会社を休んだ日が連続して3日あった場合で、4日目より休んだ日(会社所定の休日も含む)に対して標準報酬日額(標準報酬月額/30)の3分の2の額が支給されます。
支給期間は支給開始の日から1年6ヶ月ですが、複数の傷病が重なった場合、支給期間は各々別個に計算されます。ただし、重複した期間についても1本の傷病手当金として支給されますので、この場合も支給額は標準報酬日額の3分の2ということになります。

   ただし、労務不能の期間について、以下の項目に該当する場合、傷病手当金の額が調整されます。
1.会社から給与を支払われた場合
2.同一の傷病により障害厚生年金を受けている場合(同一の傷病による障害基礎年金を受けるときはその合算額)
3.退職後、老齢厚生年金や老齢基礎年金または退職共済年金などを受けている場合(複数の老齢給付を受けているときはその合算額)
1〜3の支給日額が、傷病手当金の日額より多いときは、傷病手当金は全額不支給となり、傷病手当金の日額より少ないときは、その差額だけが支給されます。  なお、支給期間の1年6ヶ月は、支給が開始されてから1年6ヶ月です。例えば、労務不能となっても会社より給与が1年間全額支給され、傷病手当金が全額不支給となっていた被保険者が、1年が経過し会社からの給与が支払われなくなった場合、支払われなくなった日が傷病手当金の支給開始日となり、その日から1年6ヶ月が支給期間ということになります。
なお、傷病手当金の継続給付については、後の継続給付にて解説します。