就業規則の役割
労働諸法令に定めのない部分は、原則として契約は自由!
企業(使用者)が労働者(使用人)を雇い、働いて貰って賃金を支払う、労働者は働くことによってその報酬(賃金)を得る、この契約関係を「雇用契約」といいます。これは、私的な契約関係である以上、民法の考え方からすれば「契約自由の原則」ということになります。
しかしながら、雇用契約という特殊性(当事者双方が対等の関係になく、企業は強者で労働者は弱者という考え方)を鑑みて労働者保護を目的とした特別法が制定されました。これが、労働基準法をはじめとする労働諸法令です。
これらの法令は、基本的に使用者(企業)が労働者を雇用する上での様々な制約を国家と企業の約束事として定めたものです。法治国家である以上、これらに違反すると不法行為となり、場合によっては禁固等の罰則を科せられることになります。
ただ、これら諸法令には雇用契約上の全ての事項が定められているわけではありません。 したがって、ここに定めのない事項については、民法の「契約自由の法則」の考えに基づいて、企業と労働者が自由に労働条件を決めればよいわけです。
就業規則は、諸法令を遵守しながら企業独自の思想でもって雇用契約を締結するために企業が作成し、制定する基本的な労働規範です。
就業規則は、企業秩序を守ることが第1に目的
雇用契約は、労働者の「労務の提供」と企業の「賃金の支払い」という主たる義務を以って成り立っていますが、この義務を履行する上において付随する義務が存在するとされています。
特に労働者に課せられた付随義務は、「誠実勤務義務」「職務専念義務」「守秘義務」等があり、これらは、就業規則において具体的にやらなければならないこと、やってはいけないこととして「服務規程」等で定めます。その上で、これに違反した場合の処分については、「懲戒規程」で具体的に定めます。これらが定められていない場合、労働者の悪質な行為に対し、懲戒処分を課することは難しくなります。
つまり、就業規則は、企業秩序を守るために制定するものであり、したがって、この規則の中で特に重要なのは、「出退勤規程」「服務規程」「懲戒規程」等ということになります。
法令順守と実態合致
就業規則を作成するとき注意しなければならないことは、その内容が労働基準法等に違反していないということと、その企業の就業実態(労使の関係も含めて)に合致しているかどうかということです。
いくら法令違反のない就業規則でも企業の実態に合っていなければ意味がないどころか、かえって労使トラブルの原因になりかねません。
雇用関係=信頼関係を築くために
ただ昨今、社員に対して「これをやれ!」「これはやるな!」「こんなことをすると懲戒処分するぞ!」と言わんばかりの性悪説に立った就業規則が目立つようになってきています。労使トラブルが多発する中、やむを得ないことかもしれませんが、度を過ぎた内容は考えものです。
本来、「雇用関係」は「信頼関係」でなければなりません。社員教育が行き届き、経営者と社員が同じ仕事の価値観、使命感を共有出来ていれば、就業規則の内容にあまりこだわる必要はないのかもしれません。ちょっと理想論かもしれませんが......。
※雇用契約とは、法的な契約関係です。これを信頼関係にしていくのが社員教育です。
就業規則の作成や改訂は、多くの実績を持つCS労研にお任せください。