うちの社員に限って…、なんて時代は、もう過ぎ去りました。
「いろいろお世話になりました」と送別会で涙を流しながら円満退職していったはずの社員、1週間後、この元社員の申告により労働基準監督署の立ち入り調査があり、残業代の未払いを指摘され、是正勧告により全社員に過去6か月分の残業代(約4,000万円)の支払を命じられ、その上、労働時間管理の徹底を指導された。なお、元社員の代理人である弁護士から「2年間遡って未払いの残業代を支払え!」という内容証明郵便が届いた。
労働基準法は、1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない(第32条)、と定めていますが、社員の過半数を代表する者との書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出た場合は、1週間40時間、1日8時間を超えて労働させることが出来る(第36条)としています。
ただし、この場合には通常の時間単価でなく原則として25%以上の割増賃金を支払わなければならない(第37条)としています。
つまり、労働基準法において賃金は、労働時間に対して支払うことが原則となっています。
製造、鉱山および建設等の現場労働者のような集団プレー型職種では、労働時間管理も比較的容易であり、その意味において労働時間を基準にして賃金を支払うことに合理性があるといえます。一方、営業、事務、サービス、企画といった、どちらかというと個人プレー型職種では、労働時間を把握し管理することは困難な場合が多く、労働時間を基準に賃金を支払うことに必ずしも合理性があるとはいえません。
しかしながら、労働基準法は職種、業種の如何に関わらず、原則として「賃金は、労働時間に対して支払う」という立場をとっており、そのことが「未払い残業代」を発生させる一つの要因になっています。
そもそも残業とは、会社の業務命令により行うものであり、業務命令がない場合は会社の残業許可を得て行うものです。しかしながら、命令も許可もない残業についても、多くの場合は「黙示的な残業命令」があったとして、「未払残業代」を請求してくるのが今や当たり前のようになってきました。
昨今、労働者を煽り、企業の曖昧な労働時間管理、就業規則の不備などを衝いて一部の○○士が代理人となり「未払い残業代」の支払いを要求してくる事例が頻発してきています。このような○○士の不当な要求に対し、充分に反論できる就業規則の整備、適正な労働時間管理、賃金体系の構築が急務となっています。
今すぐ確認して下さい!
●残業命令・残業許可に基づき、残業が厳格に管理され、勝手居残り残業はさせていない。
●出勤簿で勤怠管理する場合、毎日の始業・終業の時刻を明記して管理出来ている。
●タイムカードで勤怠管理をする場合、打刻時間と実際の始業・終業時刻がほぼ一致している。
●所定労働時間内で処理できる仕事量を与えている。
●掃除・ミーティングについて、指示や命令(暗黙の命令を含む)は出していない。
●就業規則等で労働時間の把握方法を明記し、それにしたがって労務管理を行っている。
●割増賃金の支給要件が賃金規程に明確に定められている。
●営業手当や職務手当など、基本給以外の賃金の支給目的・支給基準が明確である。
●管理職等の残業代適用除外基準に合理性がある。
●1日の所定労働時間は8時間である。(特に7時間などになっていない。)
●労働時間と休憩時間の区分・管理が明確に出来ている。(特にスーパー・飲食業等)
●管理職が部下の労働時間管理を的確に行っている。また、その能力がある。
●変形労働時間制を採用し、最大限の所定労働時間を設定している。
「いいえ」の数が多いほど、「未払い残業代」を相手の言うままに支払わされる可能性が高くなります。